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雑感・備忘録・たまに偉そうなことをいう

【日経より】病院間の電子的ネットワーク構築の実現は、まだ遠し

数日前地下鉄で移動しているとき、正面に座っているビジネスパーソン(昨今サラリーマンとはいってはいけない)が広げている日経の1面に掲載されていた記事がこちら。

 

web.fisco.jp

 

要約すると、公費を530億円ほど投入し診療データを病院間で共有するネットワークを構築することで重複医療を解消しようとしたものの、登録者は人口のわずか1%だったというものです。こうした題材の場合、まず多くの方に浮かんでくるのは、我々の血税を無駄にして(怒)、というものではないでしょうか。

 

確かにそれは否めませんが、個人的にはそこそこ大きな問題なのでは?と感じています。社会保障問題に多かれ少なかれ関心をお持ちの方は、たびたび目にしているかもしれませんが、少子高齢化の進展に伴い日本の医療費は年々上昇しており、現役世代の保険料や所得税といった負担も上昇の一途。このままでは、日本の皆保険制度は崩壊する、とさまざまなメディアが声高に私たちを脅しているのが現状です。

 

医療とITを融合し、カルテや検査画像、処方箋をあらゆる病院と共有すれば、多くの無駄を省くことができ医療費の適正化を図れる、という国が描く理想の実現はいきなりの崖っぷちの岐路に立たされたようですが、記事の後半でなぜこのプロジェクトが上手く進んでいないのかが示されています。

 

かいつまんで言うと、一部想像も入っていますが、他の病院に────ミス(自分ではそう思っていないが)がばれるから嫌だ、水増しがばれるから嫌だ、未熟さがばれるから嫌だ、とにかくめんどくさい、といったところでしょうか。もはや感情論がプロジェクトを妨げているとしかいえません。もしこのプロジェクトへの賛同者を増やし、プロジェクトの浸透をできる限り早めるには、この感情論をうまくコントロールすることが合理的ではないかと思います。

 

かつて永仁の徳政令という、金貸しからお金を借りすぎて首が回らなくなった御家人を救済する法令がまかり通った歴史がありますが、その徳政令よろしく不正もミスもいろいろあると思うけど一切に目をつぶるので、また病院間で突っ込み合うのもなしとするので協力してください、しかも協力してくれたら何らかのインセンティブも付与しますよ(何が適切なのかはわかりませんが)と国が宣言してみたらどうなのでしょうか。

 

問題ありありなのは当然ですが、問題の根底に渦巻く感情論を抑えて病院間の電子的連携をうながすには、これぐらいの大胆さが必要なのでは、と思うわけです。加えていうならば、別にうちらが病院間ネットワークに参加しなくても経営で困ることないし、とたかをくくっている医療機関もあるかもしれないので、こうした我関せず的な医療機関への対応も考える必要があるでしょう。

 

実現までの道のりはいばらの道に思えて仕方ありませんが、上記の極論以外にベストな解決策は皆目検討がつきませんが、医療に関する仕事にも近からず遠からず関わっている身としては少々気になった記事なのでした。おしまい。